2025.12.14
ご家族が亡くなられた際、預貯金や不動産の手続きは真っ先に行われますが、意外と後回しにされがちなのが「自動車の相続手続き(名義変更)」です。
しかし、自動車は「動く資産」であり、公道を走る凶器にもなり得ます。権利関係をあいまいにしたまま放置することは、非常に高いリスクを伴います。
今回は、自動車の相続手続きについて、法律上の期限、必要な書類、そして知っておくと便利な「100万円以下の特例」まで、実務の現場から分かりやすく完全解説します。
まず、最も重要な「いつまでに手続きをすべきか」という点について解説します。
道路運送車両法では、以下のように定められています。
よく勘違いされるのですが、これは「被相続人(亡くなった方)の死亡日から15日」ではありません。「誰が車を継ぐか決まった日から15日以内」です。
期限を数日過ぎたからといって、直ちに罰則が適用されるケースは稀ですが、法律上の義務であることを忘れてはいけません。
期限のルール以上に怖いのが、手続きを放置することによる実質的なリスクです。
相続手続きのメインとなるのが「遺産分割協議書」の作成です。
「他の財産(不動産や預金)の話がまとまっていないから、車の名義変更ができない」と思っている方が多いのですが、実は自動車だけ先行して協議書を作成し、手続きを進めることが可能です。
ここでは、一般的なパターンと、手続きが楽になる特例パターンの2つをご紹介します。
車の査定額に関わらず使用できる、最も正式な方法です。
相続人全員(例えば、母と子供2人なら計3人)の実印と印鑑証明書が必要になります。
被相続人 〇〇 〇〇(昭和・平成〇年〇月〇日生)
死亡日 令和〇年〇月〇日
本籍 大阪府守口市〇〇町〇丁目〇番地
最後の住所 大阪府守口市〇〇町〇丁目〇番〇号
被相続人 〇〇 〇〇 の死亡により開始した相続について、共同相続人全員で協議をした結果、以下の遺産については、下記のとおり分割することに合意した。
1. 分割の対象となる遺産(自動車)
登録番号 大阪 300 あ 1234
車台番号 ABC-1234567 ※車検証を見て正確に記載
車名 トヨタ
2. 分割の方法
上記の自動車は、相続人 〇〇 〇〇(新所有者)が取得する。
以上の合意成立を証するため、本協議書を作成し、相続人全員が署名捺印する。
令和 年 月 日
(以下、相続人全員が署名し、実印を押す)
住所 大阪府守口市...
氏名 相続人A 実印
住所 東京都...
氏名 相続人B 実印
相続する自動車の価値が100万円以下の場合、「遺産分割協議成立申立書」という簡易的な書類を使用できます。
最大のメリットは、車を継ぐ人(代表者)の実印と印鑑証明書だけで手続きが可能という点です。他の相続人の実印を集める手間が省けます。
※ただし、別途「査定資料(中古車サイトのコピー等)」の添付が必要です。
大阪運輸支局長 殿
被相続人 〇〇 〇〇 の死亡により、下記自動車は、遺産分割協議の結果、申立人が取得することに決定しました。
なお、当該自動車の価額は100万円以下であることを申し立てます。
1. 自動車の表示
登録番号 大阪 300 あ 1234
車台番号 ABC-1234567
車名 トヨタ
2. 遺産分割協議成立年月日
令和 年 月 日
3. 共同相続人(他の相続人の名前を列記)
〇〇 花子、〇〇 次郎・・・
この申立に虚偽はありません。万一、後日紛議が生じたときは、当事者間で解決し、貴職には一切ご迷惑をおかけしません。
令和 年 月 日
申立人(新所有者)
住所 大阪府守口市...
氏名 〇〇 太郎 実印
電話番号 090-0000-0000
上記の「遺産分割協議成立申立書」を利用するためには、その車の価値が100万円以下であることを客観的に証明する必要があります。これには2つの方法があります。
現在、多くの陸運局で認められている最も手軽な方法です。
※明らかに年式の古い車(10年落ちなど)であれば、この印刷物で十分通用します。
日本自動車査定協会(JAAI)に依頼し、正式な「査定証」を発行してもらう方法です。
いざ手続きに行く際に「書類が足りない!」とならないよう、チェックリストを作成しました。
長期間入院されていたケースなどでは、車の車検が切れていることがよくあります。
車検が切れた車で公道を走ると、免許停止や高額な罰金の対象となります。絶対にそのまま運転してはいけません。
ディーラーや整備工場、または行政書士に依頼し、積載車(ローダー)で引き取ってもらう方法です。「車検」と「相続の名義変更」をセットで依頼するとスムーズに進みます。
どうしても自分で運転して陸運局へ持ち込む場合は、市役所で「仮ナンバー(自動車臨時運行許可)」を借りる必要があります。
<仮ナンバー取得の手順>
<陸運支局での手続き>
窓口で「移転登録(名義変更)と継続検査(車検)を同時に行いたい」と伝えて手続きを進めます。
ここまでは普通自動車(白ナンバー)の説明でしたが、軽自動車(黄色ナンバー)の場合は手続きが少し簡単になります。
ただし、軽自動車検査協会での手続きとなりますので、行く場所(陸運支局とは別の場所)を間違えないようにしましょう。
自動車の相続手続きは、戸籍の収集から始まり、車庫証明の取得、そして平日の日中に陸運支局へ出向く必要があります。
特に年度末や月末の陸運局は非常に混雑し、慣れていないと半日〜1日仕事になってしまうことも珍しくありません。
「平日は仕事で役所に行けない」
「戸籍を集めるのが面倒だ」
「車検も切れていてどうしていいか分からない」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
守口市を中心に、寝屋川、門真、大阪市内など幅広いエリアに対応しております。
当事務所の強みは以下の3点です。
ご自身で手続きできるかどうかの判断も含め、親身になってアドバイスさせていただきます。
(行政書士 / 大阪府守口市)
今すぐ電話で相談する